No.1では「唄三線(うたさんしん)」についてのお話です。
私が三線を始めたきっかけは「三線を弾けるようになりたい」であって、「唄いたい」ではありませんでしたが、みなさんはどうでしたか?
北九州に住んでいた頃、なじみのスナックのマスターが沖縄出身の方で、カラオケでBEGINとか夏川りみさんの曲を歌うお客さんに合わせて三線を弾いている姿がなんともカッコよく、他のお客さんも一緒になって店全体が盛り上がり「あんな風に弾けたらいいなぁ・・」と思ったものでした。
その後、長崎に転勤して三線のこともすっかり忘れていたのですが、2年後に沖縄に転勤することになり、「せっかく沖縄で生活するのだから、この機会に三線ぐらい弾けるようになって長崎に帰りたい!」ってなことでした。
とはいえ、三線の知識は皆無でしたので、何をどのようにすれば良いのか分からず、「沖縄の職場はほとんどが沖縄の人だから誰かに習えばいいか?」と考えたのが甘かった。
「誰か三線教えてくれる人いますか~?」「・・・・・」
となりの部に行って「誰か三線を弾ける人いますか?」「・・・・」
当時、全体で60名ほどの職場だったのですが、「少しは弾けるけど、人に教えるなんてできませんよ」って言って来たのがたったの2人だけでした。
「え~っ!沖縄の人は全員が三線が弾けるものと思っていた!」(ついでに、沖縄にはそこらじゅうにハブがいると思っていた)(笑)
その社員のひとりが「アルバイトさんが三線の教師免許を持っていますから、その人ならタダで教えてくれるはずですよ。僕もそろそろ本格的にやりたいと思ってたんで一緒に行きましょうか?」って言うものだからノコノコついていったら、琉球舞踊もやっているバリバリの琉球古典三線の師範免許を持った先生でした。(泣)
三線の持ち方、構え方をひと通り習った後、
【先生】まず、バチを持って三線の音を鳴らしてみましょう。
【黒崎の心の中】へぇ~!三線ってバチで弾くのか?スナックのマスターはギターのピックで弾いていたようだったけど?
うぅ・・持ちにくい弾きにくい(泣)
【先生】三線でドレミの音を鳴らしてみましょう。必ず「ド・レ・ミ」と声に出しながら弾くようにしてください。
【黒崎】「ド、レ、ミ、ファ、ソ・・・」
【黒崎の三線の音】ボコ、ベコッ、カスッ・・・(汗)
【先生】それでは、ドレミを工工四(くんくんしー)に変換していきますね、この表を見ながらで良いですから、ドを弾くときには「合(アイ)」、レを弾くときには「乙(オツ)」と声に出しながら弾いてください。
【黒崎の心の中】えぇ?何これ?漢字?これを全部覚えるの?
【先生】声に出すことで、歌の練習に入るときに楽ですよ。
【黒崎の心の中】えっ?歌もやるの?さっき先生がやっていたお経みたいなヤツ?(かぎやで風)BEGINとか夏川りみの曲が伴奏で1、2曲弾ければ良いだけなのに・・・
少し慣れてきた頃に気づいたのですが、工工四を見ながら弾くだけなら簡単な曲はすぐに弾けるようになるのですが、歌いながら弾くとなると一気に難しくなります。
工工四を目で追いつつ、指で弦を押さえる場所を確認しながら、右手で弦を弾くだけでも大変なのに、それに歌まで加わったら簡単に出来るわけがないですよね?
その後、長崎に転勤になり独学でやっていたのですが、やっぱり人間は楽な方、楽な方に気持ちが傾いていきます。
ときどき三線を引っ張り出して、沖縄勤務時代にもらった工工四の教本と、本屋さんで買った歌謡曲の工工四を見ながら弾いていたのですが、いつの間にか三線もケースに入れっぱなしになっていました。
それでも思い出したように弾いていたら、ある時、嫁さんから「歌はないの?」と聞かれ、沖縄の後輩からは「へぇ~、三線まだやってるんですか?歌も唄えるようになったんですか?」などと聞いてきます。
【黒崎の心の中】歌も唄えないとダメじゃん!
その頃買った沖縄三線関連の本に「唄が8割、三線が2割」「唄三線(うたさんしん)であって、三線唄ではない」という記述に一念発起!して現在に至っております。
美ら唄で私と一緒に参加した方なら見たことがおありだと思いますが、私の工工四は、教本とかネットで見つけたものを加工して自分の唄三線用に作り変えています。
もちろん、美ら唄倶楽部で貰った工工四も楽譜は変えませんが、そのまま使いません。なぜなら、その曲の譜面どおりに弾けて、歌詞を1番だけ唄えるようになっても意味がないと考えているからです。
曲によっては7番とか10番目の曲とかもありますので、そんなのは無視(笑)しますが、一般的に1~3番まで歌われている曲、1~5番まで歌われている曲は、その全部がつながって一つの話が出来ていると思っていますから、全ての歌詞を歌いやすいように工工四の譜面を加工しているのです。
例えば、皆さんご存知の「安波節」の場合は・・・
①安波ぬまハンタやハリ肝すがり所
②宇久ぬ松下やハリ寝なし所
③安波ぬヌン殿内ハリ黄金灯籠下ぎてぃ
④うりが明かがりばハリ弥勒世果報
⑤嘉例吉ぬ遊びハリ打ち晴りてぃからや
⑥夜ぬ明きてぃ太陽やハリ上がるまでぃん
⑦夜ぬ明きてぃ太陽ぬハリ上がらわんゆたさ
⑧巳午時までぃんハリ御祝しゃび しゃびら
①~⑧番までイッキに全部唄うことは無いですが、①~④と⑤~⑧は4句でひとつの詩、少なくとも①と②はセット、以下③と④、⑤と⑥、⑥と⑧は上の句と下の句でセットになっています。
沖縄の民謡は琉球方言(うちなーぐち)で歌われていますから、曲によっては「何を歌っているのかさっぱり分からない」ということもあるでしょう。(細かいことは私にも分かりません)
八重山民謡や宮古民謡ならなおさらですが、子守唄や教訓歌、生まれ島をたたえる歌、恋愛の歌、別れの歌などなど星の数ほどあります。
初心者の方は歌うことへの抵抗感があるかもしれませんが、その曲の意味が分かって唄三線が出来るようになると、三線の楽しさが倍増しますよ!